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13回  佐賀県公立小中学校

事  務  研  究  大  会

 

2002年(平成14年)11月15日

場所:東与賀文化ホール・ふれあい館

講演記録集

佐賀県公立小中学校事務研究会

講師:全国公立小中学校事務職員研究会 会長 神谷敏明 氏

演題:「教育改革と学校事務職員をとりまく課題」

 

 

1.はじめに

みなさんこんにちは。ご紹介をいただきました、全事研会長の神谷でございます。朝から中身の濃いお話でお疲れだと思いますが、時間をいただきましたのでお付き合いをお願いします。全事研の会長としてこの佐賀の場にお招きをいただいたのは初めてのことですし、私自身としてもこういう機会を与えていただきましてほんとに感謝を申し上げます。午前中のビジョンにもありましたとおり、佐賀の皆さんが良い結果をだしていただけることを心から期待をしております。よろしくお願いをいたします。

今日お話をさせていただきます中身につきましては、「教育改革と学校事務職員を取り巻く課題」ということで新聞紙上を賑わしています教育改革をめぐる様々な動向について、全事研の立場でご報告とご説明とをさせていただきます。レジュメについては、この集録の中に入れていただいています。この流れに沿ってお話をさせていただきます。大学を卒業するときに「働ける仕事がないか」というのでもう年末だったんですが、学校事務という試験だけが残っていまして、たまたま受けたら受かったということで、神谷の事務職員生活がスタートしたわけであります。

なったからには「学校にいる職員として一所懸命やろう」ということで、ここにも書いてありますが、採用4年目から横浜の研究会の役員にさせられました。研修担当の役員になりまして、自分が一番知りたいことを一番聞きたい人にお願いをして、そういう研修の企画からこの研究会活動に没入をしたということになります。全事研との付き合いも、私が横浜の会長をやってるころまでは、神奈川支部の支部長として全事研の会合に出ていたんですが、そこまでは全事研のいろいろ考えていることやってることについて横浜の立場での発言ばかりしてたんですが、いつの間にか、今度は答弁する側に回ってしまったいうのがこの全事研との関わりでもあります。

全事研も、昔は東京の事務職員が中心で、東京がリードしてスタートしてきたわけでありますけれども、歴代会長でいきますと埼玉の柴崎 一さんが全事研の会長になられて以降です。全事研が組織として盤石な基盤を作っていったというふうに思っています。それ以前は個人の、といいますか東京の事務職員が担当する全国組織という色彩が濃かったんです。それ以降ですね、柴崎さん以降、全国的に組織として確立してきたといえるんだろうと思います。全事研が、文部省のなかで認知を受けたのも、午前中の資料にもありましたが、臨時教育審議会で「全事研を代表して」ということで、会長になりました宮内繁弘が事務職員としての意見をこの臨教審のなかで発言をする機会を得ました。それ以降、文部省の中で一目置かれる団体として認知をされてきたというのが経過であります。

 

2.教育改革のながれ

ご案内のとおり「臨教審の第三次答申」のなかで、初めて学校事務の重要性についてふれていただいたのが歴史的にも画期的な出来事だったと思います。つい先だって、もう平成10年ですから4年前にもなりますが、「今後の地方教育行政の在り方」のなかで二度、全事研として私どもの意見を述べさせていただく機会に恵まれました。この中教審答申の中で事務職員にかかわる部分、「予算に関わること」とか「事務の効率化」についてもかなり私どもの意見を取り入れていただいたんではないかなと自負をしているとこであります。全事研はそういうことで活動を進めてきていますし、『学校事務職員が教育に責任を持つ』という立場で文部科学省にも意見を述べさせていただいているところであります。是非、ご理解をいただいて、また佐賀のいろんな考えを、事務職員の総体の考えの中に取り込んでいけるような体制作りをお願いしたいと考えております。

冒頭、共同実施のことも話題になっております。平成13年に第七次定数改善計画で事務職員の加配をつけるときの理由を、全事研と皆さんご存知の文科省・財務課の勝山補佐と下打ち合わせをしまして、いくつかの項目に羅列列挙したわけであります。「こういう中身について県教委から要望が出れば加配をつけよう」というシナリオみたいなものを各県にも御配りをしました。

共同実施の加配についての考え方を述べさせてもらいますと、まず第一に教育の情報化が国の大きな事業の柱ですので、「教育の情報化の対応」ということで各教育委員会が目指す情報化推進計画の学校・家庭・地域における連絡調整として事務職員の加配の理由に挙げなさいというのが項目のひとつであります。次にはインターネット・校内LAN・コンピューター整備など適切な情報環境、ハード・ソフトの整備、学校間連携を伴う地域情報化の拠点として対応、著作権等法令への整合性の適否判断というのが情報化という中で事務職員が担える事柄だろうというふうに考えました。二番目の柱として、学校予算の効率的運用という中で、「学校裁量権限の拡大」にこの事務職員の加配を大いに有効活用しましょうということであります。三番目には事務処理機能の向上のため、教頭や教員が本来の職務に専念できるようこれら職種が、現在行っている「事務処理の負担の軽減を図る」ことにより教育効果が向上すると。大きな四番目で、「事務処理の効率化・集中化」ということで自己完結型事務処理体制から集団事務処理体制を整備することによる事務の共同処理の推進、学校間の教育環境の均一化、適正な就学事務の確保。五番目に「事務量の増大対応」ということで総合的な学習の時間など新指導要領に対応するため資金前渡吏員的な役割を期待。六番目に「学校外部への対応強化」ということで、学校で唯一の行政職員として学校評議員への対応、情報の公開、地域への提供、さらには地域コミュニティの拠点としての学校施設の利用・活用促進などに関する事務部門の強化。七番目に「事務職員の資質向上」のため、一つとして単数職種から複数職種に変わることによる職業観の確立や知識の習得など資質の向上、二つ目に職場内研修を通じ経験年数の浅い事務職員の事務処理能力の育成や支援、次に校外における研修参加機会の拡大が可能となり、これにより学校に勤務する事務職員の専門性がより高まる、チェック機能の向上、事務職員同士の相互牽制ができるという項目を挙げました。更には事務職員未配置校へのフォロー及び支援体制の確立、事務職員の処遇改善、事務長発令などの促進、小規模市町村における学校事務と教育委員会との連携機能強化、最後に事務職員の過員が生じる県への対応ということで、いろんな要素を各県から、「これを理由に事務職員の加配をくれと言ってきた場合にはOKをしよう」という、そういう勉強会を兼ねた打ち合せ会を行いまして、全事研のルートで各県教委へ向けて「こういう中身で要求を出せば加配をくれるぞ」ということでお知らせをしてきました。

その中で、校外における研修参加も事務職員が複数いれば、例えば、もう一人の事務職員が教員の内地留学のように長期にわたって研修をうけることも可能になるでしょうし、あるいは事務研の役員が、その業務に専念することも研修の強化になるだろうという話もしてきたわけであります。情報を情報としてだけではなく、その情報の裏に「こういうことがありますよ」と言えるのも全事研の強みだろうと思っているとこであります。

さて、本題に入りますが、現在進められています教育改革についてであります。その前に、10月30日に出されました地方分権改革推進会議の最終報告について誤解のないように説明させていただきたいと思います。新聞を見ますと文部科学省が、いかにも抵抗勢力かのように小泉改革に対して非協力的であるという論調が新聞報道されています。実は、これは全部総務省付きの記者が書いている記事が、全てそうなっている訳であります。ご案内のとおり総務省は、義務教育費国庫負担の三兆円を喉から手が出るように欲しい訳です。「国の負担金から地方交付税交付金にして総務省のほうによこせ」というのが、今の総務省の主張であります。省庁で予算が大きいということは政策立案の実現する可能性が高くなるわけです。ランクからいいますと総理府がありまして、お金を握っている財務省が、一番強い省ですが、二番目、三番目に続くのは予算が大きい省が、政策の実現がしやすい、その分予算を取ってこれるということであります。総務省が文部省より高いところに行きたいという省益が背景にあるわけです。

今夏の総理の宿題に一番協力的といいますか、結論を出したのは文部科学省だけでして、他の省庁は、一切具体的な数字を出していないわけです。文科省は義教法の五千億円の削減で小泉改革に協力をするという形をとらざるを得ないということで提案をしてきた訳です。最後の最後まで文部科学省グループと総務省グループとの綱引きが行われまして、直前の29日になって、ある委員が辞表を出しながら文部科学省の案では呑めないというような抗議をしたということが載っていましたが、最終的には西室議長の判断ということで、当初の予定通りの内容で最終報告がだされました。西室議長の取った決断というのは、この分権会議の10月30日に出す中身についてはタイトルにもありますように「国と地方自治体の関係のなかで事務事業の見直しをしましょう」と、そういう叩き台をつくる使命でありました。新聞で報道されているように「税財源の委譲が伴わなければ意味がない」という論調は、次のステップで来年の6月までの間に課題になる事柄であります。それを総務省が、今のうちに何が何でもこの税財源委譲という理屈の中で「国庫負担金を地方交付税にさせたい」という思惑で動いてきたということもご理解をいただきたい。

地方分権推進会議が出しました最終報告の事柄についてでありますが、あれがあのまま実現するということではありませんので、これも誤解のないようにお願いをいたします。あの内容に基づいて「これから税財源をどう地方に委ねながら制度を変えていくか」という論議が経済財政諮問会議の場で来年の6月までの間に進められるといことでありますので、本格的な綱引きはこれからスタートします。予定通り進むのは文部科学省が合意をした内容についてだけに限定をされるということです。文部科学省は、もうこれ以上は負けられないということでありますので義務教育国庫負担制度の根幹ついては死守をしていきます。

ただ、平成16年度と18年度に大きな制度改革が予定をされていますので「そのなかで変えるものは変えていく」ということです。一つは、先ほど言いましたように五千億円のなかで共済の長期掛金に相当する部分、退職手当に相当する部分は段階的に地方に委ねていきます。国庫負担金の中からは段階的に削っていきましょうということを言っています。もう一つは16年度の国立大学の独立行政法人化に伴って給与制度が変わりますので、この時に「政令指定都市の給与負担については、県から政令指定都市へ委譲をしていきましょう」と、これは既定のルートで作業が進められることになります。ただ、右から左に動くということではなくて、県が持っている財源をどういう形で政令市に委譲していくかという細かな作業が、県と政令市のなかで行われますので、その条件が整わないと政令市の給与負担ということも予定通りには進まないかもしれません。

更には18年度の公務員制度改革に関わって、国庫負担制度のいろんな煩瑣な事務手続きを簡略化していこうというような主には周辺的な事柄が多いわけでありますが、新聞で言われていますような義務教育国庫負担をそのまま地方に丸投げするだとか、定額化とか交付金化だとかいう事柄についても、文部科学省としては慎重にやってくれと。定額化については文部科学省の言う定額化と総務省が言う定額化とでは若干意味が違っているようですが、文部科学省が言っている定額化については、国庫負担がいろいろ変遷をしてきましたが、昔は『定員定額制』という言い方で政策行為が行われていました。今は『実員実額』ということで国庫負担の計算が行われていますが、文部科学省がいう定額というのは給与の本体の部分だけを死守するという意味で、その周辺のいろいろな手当については状況によっては削るのも吝かではないと。だけど本体の部分については死守をしますという意味の定額化ということで使っています。

それから交付金化というのは、これははっきりとした制度にはなっていませんので総務省がどういうイメージをしているか、見えておりません。文科省からレクチャーを受けたなかではどうもこういうことらしいという、一番想定されている交付金に一番近いのが、自動車の違反したときの罰金がだいたいこれにあたるらしいです。財源として集めて各県から一度国の金庫に入って、国からまた県へ交通行政に関わる財源ということで県に戻されているわけであります。これが新聞で言われている交付金のイメージに一番近いという事柄だそうであります。人件費ですと、その年度年度で予算に合わせて査定をしないといけないことになっていきますので、この人件費を交付金化するのは制度上かなり無理な事柄になるので文部科学省としても猛反対をしているわけであります。

こういったことをぜひご理解をいただいて、新聞の読み方についても、だいたい文部科学省が抵抗勢力のような書き方っていうのは総務省付きの記者が書いていると。新聞の編集の立場から言えば、文科省付きの記者が書くと文科省を擁護するような書き方になるわけですが、それでは読者受けしないという配慮があるんでしょうが、どうも新聞報道は文部科学省に冷ややかな記事になっています。その反面、いろいろ反撃をしていただいていますが、先般、東京都の教育長が「やはり義務教育は国の責任でおこなうべきである」と、「当然義務教育に係る費用についても国庫負担するべきである」という発言を経済財政諮問会議に向けてやっていただいておりますので、こちら側の味方をどんどん作るしかないと思っています。そういう世論をつくっていく作業はこれからもっともっと求められてくるんだろうと思っています。

もう一つ皆さんがご心配の部分は、この最終報告の中にいわゆる必置規制的な見直しという言い方を私ども事務職員はしますが、学校栄養職員・学校事務職員に関する国の関与の見直しということで、国庫負担制度から外せというのと、定数法から外せという二つの意味合いで中間報告の中でいわれました。これは、未だに総務省が言っている内容であります。ただ文部科学省のレクチャーでは、中間報告よりも少し後退した記述になっております。これは、文部科学省として頑張った成果でありますというふうに言っておりますが、学校栄養職員や事務職員については「義務標準法等を通じた国の関与の見直し及び義務教育費国庫負担制度の見直しのなかで地域や学校の実情に応じた配慮がいっそう可能となる方向で引き続き検討を行う」という文言になりました。中間報告のときは、「国が一律の基準で義務付けるのではなく、各地方公共団体の主体的判断に委ねるという観点からの検討が必要である」ということで論じられていましたが、少し表現がマイルドになりながら「義務教育費国庫負担制度の中で事務・栄養のことについては考えていきましょう」ということに、最終報告では記述が変わって、一定押しとどめることができたということでご理解をいただければというふうに思います。

教育改革の流れについては何度も言われていますし、午前中の佐事研ビジョンでも詳しく言われました。「今後の地方教育行政の在り方」というこの第十六期中教審答申が、教育委員会制度、五十年もたって教育委員会制度を見直すために検討を進めてきたわけです。しかし、教育委員会を変えるだけでは教育は変わらないということで、学校をどう変えるかという論議に後半移ってきました。その中身がご案内のとおり『学校の自主性自律性の確立』ということでいくつか項目が絞られてきたわけです。一つには学校裁量権限の拡大ということがいわれています。二番目の柱で、校長・教頭への適材の確保と教職員の質の向上、三番目に学校運営組織の見直し、四番目に学校の事務・業務の効率化、五番目に地域住民の学校運営への参画ということで提言がされ、この間、昨年までに所要の法改正が行われてきました。この14年度からは、法改正に則って新しく学校完全週5日制と新教育課程でスタートしたというのが今までの経過であります。

学校の事務・業務の効率化では、学校のいわゆる共同実施しか我々は話題にしませんが、中教審のほんとのねらいは、学校の事務・業務の効率化では、非常に小規模校もある、大規模校もあり、地方にいけば複式の学級でやっている学校もあるというなかで、業務の効率化に主眼をおいてきたわけであります。義務教育の水準の維持向上ということで、業務の効率化が挙げられました。学校の業務は、文字通り教育活動ですので、「教育活動を学校間連携で、より合理的に、より効率的に行う方策について検討しなさい」ということが言われた訳であります。学校事務の効率化は、我々がやっている学校事務はその中のごく一部の領域であります。教育委員会が持っている事務と学校で行っている事務、両方含めて「学校の事務の効率化」という意味合いで、この間検討されたということであります。是非このことも念頭において考えていただければと思います。こうしたなかで今までともすれば我々学校事務職員は、我々が行っている事務だけをみながら論議をしてきたんではないかなという反省に全事研は立っています。今年の群馬の大会で「仕事宣言」ということで改めまして提言をさせていただきました。

これは、佐賀の皆さんがた既にお取り組みいただいている「職務標準の明確化」と具体的なボトムアップに繋がる「事務室経営案」を両方合体させるなかで、学校の事務組織をより確立し、強化していこうという狙いで設定させていただきました。

学校の事務・業務の効率化について、もう一つ、申し上げておきます。国庫負担制度を今まで誤解をしているのは、こっちから半分が県費で、こっちから半分が国庫負担だと思いがちなんですが、実際の国庫負担制度というのは3月に定数の査定が各県へ内示がされます。10月からヒアリングが始まって、10〜11月で「うちの県に何人教員をください。事務職員をください」というのを行います。前年の11月に各県が文科省に要望を出して、3月に確定をします。「じゃおたくの県は、何人事務職員を雇ってもいいですよ」ということで、4月からスタートして行く訳であります。ただ、その間国からもらっているかというとそうではなくて、国がお金を出すのは、年度が終わって5月の連休頃に清算行為を行います。5月の清算時点でおたくの県、佐賀県では県費負担事務職員が何人いましたということでその人数に応じて、800万円の2分の1ですから400万円見当を県に支払っているというのが義務教育費国庫負担制度の事務的な流れになります。

共同実施によって非常勤の事務職員が加配で来たと、おかしいじゃないかとの声も聞くんですが、これは共同実施の仕組みからくることではなくて、人事任用の問題であります。10月時点でその県が共同実施を含めた人数をヒアリングとして出していれば、常勤の事務職員を加配校へ異動してもらうことは可能になるわけですが、それが間に合わない県は、3月に内示が確定をした段階で急遽事務職員を配置するということになります。当然、臨時的任用の事務職員を配置せざるを得ないのが該当県の実情です。これは、共同実施のせいではないということであります。あくまで各県の人事任用計画が行われてこなかった、そういうつけが非常勤、臨時的任用職員ということで配置をされております。このことも誤解のないようにお願いをいたします。

学校の自主性・自律性の確立というなかで大きく3つ、具体的に併記をされました。一番目には「権限と責任の明確化」ということであります。この具体化は、各県各市町村の学校管理規則の見直しということに委ねられ、あるいは校内組織の見直しもこの中に入ります。同時に、学校の事務・業務の効率化という観点で事務の再配分として共同実施を提起されてきたということであります。従いまして、当然市町村の教育委員会が行っている事務を、一定程度共同実施を行う所に委譲をしていかない限り、日常各学校で抱えている仕事を持ち寄っても大した意味がないわけです。やはり事務の再編成・再配分が当然、共同実施を考えていくなかでは課題にならなければいけない部分であります。それを学校管理規則なり、職務標準のなかに盛り込むとか、処務規程のなかに盛り込むとか、いろんな規程を作るだとか、そういう作業のなかで進めていくべき課題ということになります。

「権限と責任の明確化」というなかで学校管理規則自体が、今までは親が見ても学校がどこまでやっているのかが見えてこなかったという反省があり、「教育委員会がここまで責任を持ってやります、あとは学校がここまでは責任を持ってやります」ということを「学校管理規則のなかで明確にしなさい」ということがいわれたわけですが、そちらのほうは遅々として進んでいないのが現状のようであります。さらに時の文部大臣でありました有馬文部大臣が国会答弁で答えた中身について、中教審でいわれたのが「地方教育委員会と学校の責任分担の明確化」であります。

これからは学校の中で、仕事を誰がやっているのかを明確にしていく必要がありますと答弁されています。そのことが標準的職務の動きの大きなばねになってきたのも確かです。「学校のなかでこの仕事を事務職員がやっています」あるいは「この仕事は養護教諭のだれだれがやっています」ということをもっともっと保護者に知らせていくということが必要であります。そういう意味では、学校経営計画を保護者に配ることも動きとしていくつかのところで進められています。学校便りも各町内会に回覧板で回している時代ですので、そういう学校の情報を地域や保護者に伝えていくことがこれからの一番大きな課題かなと思っています。

二番目の柱として「校長の裁量権限の拡大」ということがいわれました。具体的には学校管理規則の見直しのなかで行われる中身ですが、先だって改正されました地教行法のなかでも明確に変更がされてきています。その代表的なものが、教育課程の編成権という今までは教育委員会の承認が必要でしたが、個々の学校の教育課程については、校長が「うちの学校はこう決めました」と届出をすればよくなりました。二つ目には2学期制の導入。いくつかのところで進められていますが、1年3学期制にするか、2学期制にするかも校長の権限になりました。教育委員会へ「うちの学校は2学期制でやります」というのも校長の裁量でできるようになりました。三番目には、授業日と休業日の振替も、年間の計画を出して教育委員会が承認をする形をとっていましたが、届出で済むようになりました。四つ目には、修学旅行等宿泊を伴う学校行事についても、教育委員会の承認から学校長の届出制に変更になっています。こういう意味で学校長の権限が具体的に拡大されてきています。

更には、人事権も地教行法の改正のなかで校長の意見具申権が入りました。これからは、特別非常勤講師とか期限付き任用職員、産休・育休代替教員等の具体的な人選を校長に委ねることになりましたので、非常勤講師は各学校で探して、「うちの学校でこの人を雇いました」ということを学校の裁量でできるようになっています。今までは、教育委員会から斡旋がきて、いいも悪いもなく教育委員会から派遣された人をその学校で採用するということでしたが、これからは校長が、学校が人材を抱えて、「今度はこの人を雇います」というのができるようになるということです。今年の1月に地教行法の改正が行われましたので、具体的には来年度から各県で実施をされると思います。

予算面でも校長の裁量権の拡大が行われていますし、各県で財務評価の話や制度改正が行われています。昨日、話をお伺いして、佐賀市はフレーム予算になったということでありますが、私が勤めています横浜市でも昨年から費目ごとに児童割・学級割・学校割の予算を一定の枠、小学校で300万円の枠、中学校で400万円、高校で500万円ですが、養護学校でも300万円の枠の中で自由に組み替えていいという予算の配当形態に変わりました。これは否が応でも学校の中で教育計画の論議をしないと、その論議に事務職員が加わらないと予算も立てられないことになります。昨年導入当初は、「非常にかったるいな」という事務職員も多かったんですが、2年目になりますと積極的に予算委員会の中で教育計画とすり合わせをしながら、例えば、校外へ体験学習に行く時の、「足代をどうするか」から始まり、その費用負担をこの予算のなかに組み込むわけです。あるいは外部の特別常勤講師として「近所の商店のおじさんだとかお百姓さんを呼んだときの謝礼はどうすんだ」というのも謝金として予算の費目で作れるようになりました。諸々の教育活動に関わる費用を各学校ごとに定めて予算化するというのが学校長限りでできるようになっています。そういう意味では、画期的だろうと思いますし、その様なところが全国的にも増えてきています。

もう一つはヒアリング制度、予算要求制度をこの中教審のなかで触れてもらいました。これについては、小さな教育委員会単位ですと今まで佐賀の方もやっておられると聞いております。予算要求を学校から上げて予算のヒアリングを教育委員会から受けて、丁々発止やりながら予算を取ってくる作業を佐賀の方は多くの方がやられていると聞いております。それを今度は全国的にやりなさいということですので、今までやってなかったところも横浜のように要求書を出し、計画書を出して予算の裏づけを取るという作業がこれからもっともっと拡がりを持っていくんだろうと思います。校長の裁量権の拡大に付随して学校長限りで執行ができるように、専決額を増やしていきましょうと、全国的には小規模の所で教育委員会が予算を握って学校には一銭も出してない所もなかにはあるわけですが、そういう所も予算要求を出しながら予算を各学校につけていく取り組みをされております。先ほどの佐事研・研究部の提案もそういう一環ではないかなと思っておりますが、具体的な取り組みが全国で進められております。

三番目の柱が、学校評議員制度になります。これも来年度からほぼ全国的に導入されていくと思いますが、その中で「どう事務職員が関わっていくか」もこれからの課題になっていくと思います。

また、中教審で強調されましたのが「学校の自主性・自律性の確立」と「学校の説明責任・自己評価」が提言をされ、そのことが開かれた学校づくりにつながりましたし、今年制定されました『学校の設置基準』の中にも「学校がもっと情報を公開していくと同時に学校の自己評価をやりなさい」ということが書かれています。これも来年度から具体的な動きとして、各学校で「やったか、やらないか」の調査が教育委員会からくるのではないかなと思います。そういう作業がこれから必要な事柄として、学校に課せられる訳ですので、ここについては、正しく事務職員の出番だろうと私自身思っております。「学校の説明責任、自己評価」も外部評価と内部評価に作業的には分かれるそうであります。外部評価は教育委員会の中に評価機関を設置しまして、各学校から報告が上がってきた事柄について評価をしていくということですが、教育学をやっている大学の先生たちは、むしろ内部評価に重点を置いた方がいいんじゃないかという提言をされています。学校の中で色々な職種やPTAの方々を含めて評価委員になってもらい、具体的に年度末反省を各学校でやっていると思うのですが、そういう中で「できたか、できなかったか」という事柄について評価をしていく、それを今度は保護者に「ここまでできました」という公開をしていかなければならないということになります。そういう作業が、これからは行われるということであります。

平成16年度と18年度の二つの山でありますが、概略の説明をさせていただきます。平成16年度はご案内の通り国立大学の独立行政法人化であります。独立行政法人・国立佐賀大学となるわけですが、今は、直営といいますか文部科学省から費用が予算として配当されておりますが、これからは補助金という形で半分くらい行くんでしょうが、残りは「それぞれの学校で稼げ」ということになっていく訳です。独立行政法人の国立大学に勤める教職員は、非公務員型に決まりましたので限りなく私立学校の職員に近くなる訳です。そういう意味では大学によって職員の給与も違ってきますので厳しい状況になろうと思います。これがどこまで義務制にくるかとの話題はありますが、義務制には困難ではないかなと思います。

国立大学がそうなるなかで、今は国庫負担の算定を国立大学の附属小中学校の教員給与がベースになっていると言われています。それが限りなく私立の学校になりますのでベースが使えなくなり、現在、文部科学省の中で検討会が設置され、研究が進められています。漏れ聞くところによりますと「国の行一の給料表を使おうか」ということもあるようですが、そうなると事務職員が使っている給料表と同じ給料表に教員が重なってくるわけですので、どのへんにくるかというのが微妙な問題になると思います。

それから16年度をめどに政令指定都市の教職員については、県費負担から政令指定都市負担に変えていこうという作業が進められています。県から政令市へどういう形で財源を移すかという課題はありますが、事務的なレベルで基準財政需要額の算定を政令市用にやり直すだけで済むことになるそうであります。一人あたりの人件費の予算が800万円と言われていますので国からは400万円、地方交付税交付金で残り400万円を措置するということになります。今は県がもらっているんですが、それを政令市にどういう形で渡すかということになると思います。

平成18年度に公務員制度改革が予定されています。これは新人事評価制度を伴って実施をされますので、適材適所、能力主義、信賞必罰と「頑張れば頑張っただけ、いい給料をあげますよ」という仕組みに変わるわけであります。国家公務員が今11級制でやっているのを8級制に変更するということでありますので国家公務員については、今後格付けをもう一度やり直す作業が必要となってきます。それを国行T基準で我々の給料表も作っていますので事務職員がどこに格付けされるかも大きな課題になってきます。この公務員制度改革については年功序列をやめるということですので、私も勤続30年の表彰をこのあいだもらったばっかりなんですが、今までは30年勤めれば30年分給料が毎年1号づつアップして等級も限りなくワタリに近いかたちで昇格をしてきましたが、今後は、それがなくなるということであります。

例えば、いま例示されているのが基本給10万円にすると年功分で1年につき5千円換算しましょうと、そういう部分と能力評価ですのでやった実績を上乗せしていきましょうという民間に近い給与体系になるということであります。これは30年前の話ですから、今はどうなったか分からないんですが、NECは基本給が1万何千円かなんですね。で、皆勤賞といいますか休まなければ10万円加算、何か役付きでその役付き手当、主任とか班長という役付きで10万円上乗せしてトータル手取りが20万円になる30万円になるという仕組みであります。限りなく、平成18年度以降の公務員給料のあり方もそういう形になっていくわけであります。従いまして、長く勤めたほうが給料が高いというのは、若い人から見れば「仕事もしてないのに給料は何で私の倍なの」という部分が少し薄らぐのかなと思うんですが、その方も年を取ればまた次の世代にそう言われるということになるわけであります。そういう厳しい状況を迎えますということです。

そういう中で学校事務職員という職種を新しい給与体系の中にどう位置付けるかということが実は大きな課題なのですが、「我々から提言をすればいい方向になるかな」と思うところであります。どう位置付けて、どう給料表にしていくか給料体系にしていくかということが課題にのぼってくるわけです。いろんな課題として事務職員同士、足を引っ張らない制度にしなければいけないので、どういう提言ができるのかどうか、職務職階制ということも避けて通れない課題になっていくわけです。

もう一つは、公務員としてのキャリアアップという事柄も重要な課題であります。数年前に全国人事委員会連合会が調査して、何らかの方策をやらなければという提言を出しています。学校事務職員のキャリアアップとして全国的に言いますと、初級の採用の県がまだまだ多い訳です。そういうところでいえば18歳から60歳まで同じ仕事をしているわけです。権限は何も違わないなかで、18歳でやっている仕事と60歳がやる仕事とどう違いがあるかがこの新公務員制度になると問われてくるわけであります。18歳ですんでいるところは18歳でいいじゃないかという論議になっていくんだろうと思います。そういう意味で公務員としてのキャリアアップと職務職階制ということを我々の中に入れていかないとみな初級でよくなることになりかねない状況になります。そういう意味では、いくつかの選択肢を我々の中に用意をしていくべきだと考えているところであります。

それから、どこへ格付けをされるかということに伴って一番いま力になるのだろうというのが各県が定めています『標準的職務』ということになると思います。今まで全事研も職の指定や標準的職務に取り組んでいますけれども、従来は、事務職員だから皆やる仕事として位置付けていました。従いまして、18歳でも60歳でもやらなければいけないことはやらなければいけないと進めてきたわけですが、これからは、「主事ならここまでの権限、事務長ならここまでの権限」とそういう権限をより明確に職務標準の中に入れ込む。また、学校管理規則や職の設置規則、または処務規程の中に明示をする作業が必要となってくると思います。そういう権限を今のうちに形作ることが、どこに位置付けされるか、格付けされるかの担保になっていくと思います。

残念ながら学校事務職員の評価というものは厳しいものがあります。先ほどもありましたように、事務職員の存在すら知らないという方もいます。事務職員の存在を知っていても、何をしているのか分からないという人が大勢いるわけです。学校の中で事務職員がどういう仕事を担っているかをもっと表に出していかない限りは、事務職員の認知度、評価が変わっていかないと思います。そういう厳しい状況が平成18年度の公務員制度改革の中で実施をされるわけであります。

そういう意味では、新型の大きな台風が今近づいている、それが天気図に載っているわけです。台風が近づいているのに何も手をこまねいて対策を立てない家庭はないと思います。台風のニュースが始まれば皆さん雨戸を閉めて、戸を打ち付けて準備をし、家を守ろうとする作業をされます。18年度の公務員制度改革というのは、それくらい大きな、下手をすれば家が飛んでしまうくらい大きな台風であります。是非この台風をしのぐ学校事務職員の仕事を今のうちに確立をしておくことが一番緊急かつ大事な事だと思います。そういう意味では、今日の大会で具体的に論議されましたことは、誠に的を得た方向で、佐賀の皆さんがたが行おうとしている事なんだということを改めて勉強させていただきました。頑張って何らかの形になる成果を今年、来年の中で作っていただければと思います。

 

3.学校事務職員をとりまく課題

学校事務職員を取り巻く課題として、身分制度上も大きな変更を迎えようとしていますが、学校をどう変えて行こうかというのが、学校事務職員としての課題だということです。学校事務論を考える時に、自分たちの事務室だけの事務論だけではなく、教育論の中で事務論を考えていかないと、これからは対外的にも説得力を持つものにならないと思います。

第7次定数改善計画の話も出ましたが、現在、改善計画として、共同実施の形で加配がされたのが二年目になります。273校に事務職員がプラス1名加配されているわけでありますが、将来的には5ヵ年計画でありますので726校の学校に加配がされます。でも726名で終わるんですね、この第7次は。第8次計画が本当にあるのかということも含めて考えないといけないんですが、今の公務員の削減という大きな改革の中では、これ以上の理屈で事務職員を増やせという論理は、もう成り立たないだろうと考えています。あるとすれば職を変えるような考え方、誤解されやすいのですが、今までは「事務職員という形で増やせ」ということでしたが、例えば、事務長を増やせと、「事務長職でまた違う別の配当枠を作れ」ということをしない限り、第8次の定数改善は厳しいかなと思うわけです。今回は、726人わずかではありますが、5ヵ年で増えます。

まだ、今年の学校基本調査の結果がでていませんが、平成12年度から13年度になった時に、小中学校100校がなくなっています。事務職員は、共同実施のおかげで初年度100何名加配がされていますので、トータルの事務職員数は減っていないんですね。学校が減った分、事務職員数も減るわけですが、それが平成12年度から13年度にかけて、ほぼ横ばい状態で、学校数だけが減ったということです。今回、14年度の学校基本調査がオープンになれば、それが鮮明に見えてくるかなと思います。これが第7次加配の本当の意味なのです。学校がなくなっても、学級数が減ってもこの加配の数は確実にその県に配当されるわけですので、佐賀県は、今のうちに49人取っておけば1市町村1名加配になりますので、早い者勝ちですので、是非、県教委に働きかけをお願いしたいと思います。

もう一つ、共同実施は、新しい学校事務の形態を作ることですが、それと同時に、明確に職位に応じた権限を確立する必要があるということです。共同実施をやっていく中で、その組織を代表する人間が必要です。そういう事務職員をどう位置付けていくのか、ネーミングを含めて考え、作っていくことが必要だと思います。現在、全国で事務長が管理職手当をもらっているのは、愛媛県の事務長だけですし、事務長が専決権を持っているのは、徳島県の事務長だけです。更には、宮崎県の事務主幹が認定権を持っている、そういう限られた所しか今はありませんが、「職位に応じた権限」をこれから取っておかないと、大きな台風には太刀打ちできないということです。

 次に、これも大きな課題になりますが、人事交流の問題です。これが増えつつあるのは、任用一本化として増えつつあります。宮崎県もそうですし、広島県もそうです。東北の方でも岩手県とか、秋田県とかで徐々に任用の一本化、県職で採用して配属が義務制の学校という形で、学校事務が成り立っている県が増えつつあります。そこでは当然、高校との交流とか県教育委員会との交流とかも行われています。今までは、引っこ抜かれて県教委へ行くことがいくつかの県ではあったのですが、それは一方通行ですので現場に戻って来れる受け皿を義務制に用意をしておかないと、高校に移って高校の事務長になっても、義務制に戻れないということになりますので、そういう受け皿作りも必要だと思います。県教委へもどんどん現場の事務職員が行って、現場の発想で教育委員会の内部から考え方を変えていくことが必要だと思います。その一番いい効果を表しているのがお隣の宮崎のやり方ではないかと思っています。人事交流というよりも、任用一本化の押し寄せる波の方が早まる可能性があります。そういうことで、我々の中で情報を得ながら、どうなってもいいような体制作りはしておく必要があると思っています。

職務標準ですが、中教審答申を受けて出された県が、中教審前は10県でしたが、中教審答申が出てからは、佐賀県もそうですが、三重県と奈良県と岩手県、鳥取県等々と徐々に広がっています。来年は、千葉県で出すということであります。そういう職務標準も持っている県と持っていない県では、大きな改革の波の中では、生き残る県、生き残れない県というふうに出てくるんだろうと思います。

その生き残る、生き残らない中で、前九州大学で今、岐阜大学に行っている篠原先生のお弟子さんで、東海女子短期大学にいる笠井先生が、愛知県の助言者で来られてドキッとする鋭いご指摘をされたのは、『これからは限りなく事務職員の世界も二極化していくでしょう。頑張る人と頑張らない人』と言っていました。そこそこやる人と、積極的に学校経営の参画ということで頑張る人と「これからは二極化していきますよ」という話です。

公務員制度改革と行革の中で言うと、頑張らない人が特に困るのは、再任用も含めて「スーパーパート事務職員」という言い方をしていましたが、再任用の方が週30時間勤務で学校に配置されて、常勤の若い人よりも30時間でより優秀な仕事ができるということになっていけば、これは「スーパーパート事務職員」の方へ軍配が上がるだろうと指摘をされていますが、そういうことだろうと思います。事務職員が学校にいる存在意義を言える事務職員でないと、給与・旅費などの作業事務についてはパソコンでやればできますし、アウトソーシングすれば、堪能な人が学校に来る時代を迎えるわけです。「スーパーパート事務職員」に負けるようでは、学校事務という仕事領域も大したものではないと思います。私が横浜事務研の会長をやった時の反省も含めてですか、38歳で横浜の会長になりました。その時に、マニュアルだとか手引きだとかというのをたくさん作りましたが、当時は、誰にでもできる学校事務という方向性だったのですが、今は誰でもできる学校事務ではちょっと困るんですね。かなり複雑な高度な判断がいる学校事務にしておかないとアウトソーシングになってしまいます。というのは、今度から非常勤職員も国庫負担の適応の職員になりますので、「常勤の事務職員を学校に置かなければ行けない」という認識を県教委が持つような働きを我々が現場でしておかなければいけないと思います。

 

4.おわりに

 最後になりますが、これからの学校事務の仕事領域の中で、職務標準に具体的に定められていますが、意味をもってくるのは『学校経営の参画』です。また、情報管理が重要となってきます。情報管理では、情報公開もありますが、その学校の事務、あるいは保護者に関わる事務についても迅速適正・厳正公正を、どう図るかが大事になってきます。情報をどう学校で取り入れるか、いっぱい入ってくるわけですが、それを取捨選択できる能力が求められてくると思います。情報公開は、公開請求されたから公開するのではなくて、もっと学校が開いて行けということです。その学校が持っている情報をどう早い時期に保護者や地域に知らせていくかも事務職員の仕事領域の中で、大きなウエイトを占めてくると思います。

もう一つ大きなウエイトを占めてくるのは、渉外活動だと思います。これは、学校間連携の中で、対外的な折衝もでてきますし、子どもたちが色々な教育機関等へ出かけていく機会も増えます。そういう橋渡しを含めた連携をどう取るかという、いわば学校と地域のコーディネーター役です。我々の仕事の多くは教育委員会と学校を結ぶ部分だと思いますが、これからは、学校が保護者や地域とどうつながりを持っていくかにウエイトが置かれるべきだと思います。そういう意味で渉外活動が重要です。私もいくつか経験があるのですが、今までは教員がやることが多く、授業を自習させていたわけです。今はとにかく「教員は自習させないで授業をしろ」というのが国民のニーズですので、その分誰が行くかということであれば、事務職員がどんどん外に出て行くべきだと思います。そういう仕事領域もこれからは、大きな比重を占めてくると思います。

 予算に関しては、説明責任と公金会計、準公金会計と書いております。これも直接、学校でどう教育活動を行ってきたかというのを、これからは示していくわけですが、その教育活動の中で「どういう予算をどう使いました」ということも公開していかなければいけない。あるいは、子どもたちから集めているお金も「どういうふうに使ってどう効果があったか」きちんと報告をしておかなければいけないし、それに対する監査を誰にやってもらうかも重要な説明責任の要素だと思います。横浜も給食費会計監査は、PTAの役員か学校保健委員会の役員となっていますが、そういう学校以外の人間で諸会計の監査を受けろということになっています。

適正・厳正ということに、こと更に我々自身がこだわっていかないと、保護者に対する説明責任は果たせない状況であります。地域住民の代表というのはやはりマスコミなんだなというのを、つくづく横浜の事務職員は実感をしているんですが、マスコミに対しても説明責任に耐えうるような迅速適正、厳正公正な事務処理を我々が気を引き締めてやらないといけない時代です。今までは、子どものためにという美名に隠れて、しぶしぶ目をつぶったところもありますが、今後は、より襟を正して学校事務を担うことが必要と思います。準公金の取り扱いについても一層ガラス張りにしながら、どういう第三者的な機関でチェックをするかの体制作りをしなければいけない。幸い横浜市は、準公金取扱規程というのを持っていますので、一定の仕組みがあります。また、いくつかの都市で準公金の取扱規程などが制定されつつあります。高校は、ほとんどの県で持っていますので、高校に習って義務制も整備をしていく、あるいは教育委員会が作らなければ学校の中で取扱要綱を定めて厳正に取り扱うことが、これから必要なんだと思います。

最後に、全事研のPRなんですが、いま全事研として各支部、各県にお願いをしている事柄があります。それの一つは、近々「一日中教審」というのが全国6ヵ所で行われます。九州地区では、福岡で127()に行われますが、これに「事務職員として意見発表してください」という呼びかけをしています。言い出しっぺの全事研本部の役員も応募しますが、私も一国民として応募したいと思います。ただ当たるかどうか分かりませんが、会場6名ずつ一人10分という発言の機会をもらえるということです。今、中教審が検討しているのは、ご案内の通り教育基本法と教育振興基本計画を両方検討しています。教育基本法は、いろいろな意見がありますが、教育振興基本計画は、これから先の文部科学省の教育政策の基になるものですので、是非、その中に「学校事務の重要性について触れてくれ」と何度もお願いをしています。

この委員で、市川昭午先生が宮崎の全事研大会で講師をされましたが、いま文科省の外郭団体で研究職をやっておられます。その市川さんが委員で、何とかお願いをして発言をしてもらってるのですが、なかなか文章として載るかどうかおぼつかない部分があります。是非、こういう一日中教審とかを利用して「学校事務の重要性について訴えてください」という呼びかけをしています。従来は、学校事務についてはほとんど載っていないですね、「学校経営の重要性について、学校評議員会を確立させる」とだけしか書かれていませんので、その分どうか佐賀の皆さんも、手を挙げて応募していただければと思います。

「新しい大学像」というのが独立法人になる時に検討され、まとめが出されていますが、その中で「大学の事務組織の確立」が崇高に謳われております。大学の事務職員は、「教育活動にまで、立ち入って意見を言え」という事まで詳しく書かれていまして、「事務組織の確立を」という記述がされているのですが、是非、義務制の学校についても、この教育振興基本計画の中に位置づくようにお願いしたいと思います。

もうひとつは、新しく教材機能別分類表というのが制定されまして、これも各教育委員会には文書が行っていると思います。来年の予算に向けて全事研が全国調査をしたいと思っているのですが、新しい教材基準で、その教材予算が全国各市町村でちゃんと増えたかどうか、チェックをしたいと考えています。その調査をやる予定であります。是非、ご協力をお願いしたいと思います。何のためにやるかというと、去年、図書館協会が学校図書費の交付税処置をして小学校30万円、中学校60万円が交付税交付金で来ているんですが、実態調査をやると、ひどいところは図書費の総額で1万円しか来ていなかったというのがありまして、それをマスコミが大問題にしました。我々としても教材について地方交付税処置されているのに、「実際現場では増えてないぞ」というのを訴えたい気持ちがあります。最終的には、「だから地方交付税交付金はだめなんです。橋や道路に化けるんです。」ということをもっと言っていきたいと思っています。それが、総務省に対する一つの反撃になると思っております。

それから、研修については、長年働きかけをしていまして、やっと文科省から通知を出してもらいました。きっかけは、10年目の教員が10年目研修を受けるようになりましたので、教特法が改正されました。その時に「各県へ文部科学省から通知を出す」と聞きましたので、その中に「どうしても事務職員の研修のことを触れてくれ」ということで通知の趣旨にはそぐわないんですが、事務職員のことに直接は関係ないんですが、その中にあえて教員以外の職種として「養護教諭、事務職員、栄養職員研修についても充実発展に努めること」という文言を入れてもらいました。文部科学省として、研修についてのあて先は、都道府県教委と政令市教育委員会と中核市の教育委員会向けの文書となっています。文部科学省として、事務職員の研修について正式見解で述べたということですので、「そこに根拠として載っている」ということを使いながら、是非、県教委及び市町村教委へ研修の充実を働きかけしていただきたいということであります。  

最後にこれからの話ですが、12月6日の金曜日の午後に、担当が文科省生涯学習局の担当ですが、独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センターのこども夢基金という事業の一環で、「実社会と教育の融合推進フォーラム」というのが虎ノ門ホールで行われます。寺脇研さんが司会をするんですが、「学校事務として発言させてもらおう」という折衝をしながら、10分間の発言機会をいただけそうな状況であります。このように全事研としては、PRを従来の広報活動よりももっとかっこよく「パブリシティ」という表現を使いますが、積極的に研究の中身も含めて、もっと外部に知らせていくことが必要だと思います。いろんな場面を利用して学校事務職員のことを宣伝していこうと思っていますので、皆様もご協力いただければと思います。  

予定の時間が、まいりましたが、ここで私の拙い話を終えさせていただきます。ご質問がございましたら、どうぞ。ご静聴ありがとうございました。

 

質問(小城中 鮎川事務長)

平成18年度に新公務員制度改革が予定されているという台風警報を、聞いてはいるのですが、具体的にはよくわからないわけです。何しろ草深い佐賀は、中央から遠いところに住んでおりますので。私どもは、一般的な感覚なんですけど、佐賀県11級制の中でおおむね7級までは行く。一年1回は昇給する。あるいは、「事務長まできて主査主事に降格することはない」とか、「7級にきたら6級に降級することはない」と半ば常識的にそのように考えておりますが、漏れ伝わりますとそのような甘いものではないという話を聞いたりいたします。神谷会長は、予測や情報をお持ちだろうと思いますので、お聞き及びのところで、お話できる範囲で私どもに刺激を与えていただけないかと思います。あわせて、佐賀県の事務職員は、処遇が基本的に同じような条件で、いわば平等なんですが、このまま平成18年度に突入した時に、どのような状況になると予想されるのか、どんなことが考えられるのか教えていただけないかと思います。

 

回答

私も、話をすべてつかんでる訳ではありませんが、先ほど言いましたように、給与体系から全部変わります。学校事務という職業をどういう給料表にしていくかはこれから検討が進められている最中だと聞いています。国家公務員の行政職は、11級が8級に制度変更して、格付けをし直します。

評価が加わりますので、評価に応じて当然降格もありうるわけです。昨日の新聞でどこかの県で「校長・教頭の降格制度が制度化された」と書いてありましたが、希望すれば「校長じゃなくて教員に戻れる」という仕組みをつくった所もありますが、そういう制度が出てきます。「どういう評価制度になるか」は、今は定まったものはありませんが、東京、神奈川、大阪あたりは試行をやっていますので、その流れを見ながら、どういう評価の制度になるのかということです。一番大きな問題は「事務職員を誰が評価するのか」がどの県も課題になっています。「校長・教頭じゃあ評価は無理だろう」とかありまして、どういう形で、どういうポイントで評価されるのか、その中で新しい給与制度とどうリンクして行くのかが、来年、再来年で検討が進められると聞いています。

新しい給料表は、今のように国行()に準拠して我々の給料表ができるとは必ずしもならないようなんです。ですから、事務職員なら事務職員という職種の給料表を新しく設置するらしい。それは、国家公務員に準拠すると3級にいくか4級のところかというバランス関係になるわけです。どれだけ事務職員の仕事領域とか職位によって権限の問題を含めて、物差しが今ないわけですが、早急に作らないと低い所に置いていかれます。佐賀の事務長が権限を持っていれば、権限がある所は少し上の方にずらして、事務職員の給料で大きく等級を「3つに分けようとか2つにしよう」とか、ある県では「18歳も60歳も同じ仕事をしているのだから給料表1本でいいんじゃないか」という、これからそういう論議になっていくようであります。

そういう意味では「学校事務という仕事をどういう位置付けをするか」がこれから試されますので、学校事務を知っている人をいっぱい作らなければならないといえます。予断すが、文科省の中に審議官が7人いて、事務職員の味方をしてくれるのは3人なんです。多数決では負けていますので、事務職員の存在意義をもっと打ち出していかないと「上限は、国6級止まりよ」ということになりかねないのが今の状況であります。「どこに格付けされるか」ということは、正にそういう重たい課題であります。.

そういう意味で、今は机上の論理ですけれども、能力主義が徹底されれば、10万円基礎基本給プラス能力給で、結果として、年配の人よりも若い人が働けば大きい金額を手取りで貰える状況も考えられます。どうなるか「今のうちに事務職員が提言をしてくれ」と言われていますので、佐賀県事務研からも良い案が頂ければ、全事研の方にもお寄せ頂きたいと思います。

    以上、終わり(拍手)

 

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